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「冷房――」
と通子が言った。
「この部屋は地下にあるから、一年を通して気温はあまりかわらないわよね。
だから、博士はいつも、夏になっても冷房をつけなかった。そうよね」
「――その通りだ。この部屋の空調設備は旧式で、
電気代がすごくかかるから博士は冷房も暖房もつけない。ときどき換気に使うだけだ」
「となると、冷房をつけたのは博士以外の人間の可能性が高い――つまり犯人ね。
犯人はなぜ冷房をつけたのか? ――人はどんなときに冷房をつけるか。
それは、まず第一に暑いとき。汗をかいているとき」
「今日は、暑かったからねえ」
「そう。だから蟹太くんが麦茶に氷を入れて出してくれたとき、
わたしは本当なら喜んで飲んでいたはずで――。
あの麦茶のグラス、今ごろはずいぶん汗をかいているはず。それほど蒸し暑かった」
「結局、飲まなかったけどね」
「ん? 麦茶? 蟹太くん、麦茶を出してくれたとき、濡れた手をふいてなかった?」
「ああ、それは、――それは、扉を壊すときに手が汚れたから」
「ちょっと待って。なんで研究室から返事がないだけで扉を壊したの?
博士が中にいて返事ができない状況だとは限らないじゃない。
玄関を開けたままちょっと外出したのかも、とは考えなかった?」
「いや、それはその。男の勘というか」
「てゆうか、博士のポケットから鍵を取り出したのも蟹太くんよね?
実に都合よく。まるで自分がすでに持っていたかのように」
「そう、ですね」
急に博士が起きあがって鬼のような形相で叫んだ。
「蟹太テメー!
冷房つけるのを断っただけで殴りやがって!」
とつぜん大声を出されたので蟹太と通子は驚いた。
読者も驚いた。
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