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ぼくが高校生のとき、母方の祖父が亡くなった。
夏休みがはじまってすぐの頃だったと思う。
その日の夕方、母とぼくは祖父の家へ向かった。
着いたのは夜だった。
ぼくの父は夜勤で来られなかったし、急なことなので、 他の親族も到着は翌日になるという話だった。
祖父の家には伯父だけがいた。
確か、祖父はもう棺に入っていたと思う。
すでに用意してあったのか、それともすぐに用意できるものなのか。
線香の匂いがしたのを覚えている。
祖母もいたはずなのだが、いたという記憶がない。
その頃はまだ老人ホームに入っていなかったはずなので、 この記憶はどこかおかしい。
しかし、とにかく、母と伯父とぼくの3人でその夜を過ごさなければ ならなかったと記憶している。
その晩は出前のラーメンを食べた。
ぼくはそれまで出前のラーメンを食べたことがなかったので、 器にぴんと張られたラップと、その内側についている湯気の露を 見るのは、新奇な体験だった。
ラーメンを食べた後はすることがなくなった。
伯父は祖父の前で黙々と焼酎を飲んでいた。
ぼくは、物心ついて以来、酒を飲んでいる姿でしか 伯父を知らない。
何かの祝いか法事かでしか顔をあわせないのだから、 考えてみれば別段不思議ではない。
普段は飲み始めると誰彼かまわず絡み始めるのだが、 その夜はずっと黙ったまま杯を傾けていた。
母がときおり、飲みすぎないよう注意するたびに 「ああ」とも「おう」ともつかない声をあげるだけだった。
ぼくは中学生の頃、この伯父が水だと言って渡した生の焼酎を飲んで、 ひどい目にあったことがある。
嫌いではないが、苦手だった。
散歩に行ってくる、と母に伝えて、ぼくは祖父の家を出た。
1へ進む。

そして迷子になった。
高校生にもなって迷子になるという体験は、なかなかできるものではない。
散歩に出たぼくとしては、喪に服すしかすることがない場所に 5分や10分ですぐに帰るのも気が進まなかったし、夏とはいっても夜の風はなかなか 涼しくて心地がよかったので、少し遠出をしてみようというつもりになったのだった。
祖父の家のある辺りは子供の頃から何度も来ていたし、 それにぼくは小学生までは隣の町に住んでいたのだ。
土地勘があるつもりだった。
だから、どうせなら知らない道を行ってみようという気になった。
通ったことのない道を選び、曲がったことのない街角を曲がった。
身に危険の及ばない冒険は、だいたいが快である。
それで迷子になった。
迷子になったとはいえ、まったくの異郷でもなし、 どこか大きな通りに出さえすれば祖父の家に帰れる自信があった。
だいたいの見当をつけて、もと来た方向へと進んだ。
だが、なかなか見知った道に戻らない。
なってみるとわかるが、夜の住宅街で迷子になると、 時間の感覚がよくわからなくなる。
そうこうしているうちに、坂道に行き当たった。
なんとなく、この坂道が帰り道に繋がっているような気がした。
ぼくは坂道を登った。
坂をのぼりきると、教会があった。
37へ進む。

ぼくはビルから出た。
ところで、われながら情けないことなのだが、 誰かとさっきまで話していたけれども、 それがどんな人物だったか覚えていない。
男だったか、女だったか、若かったか、それとも年老いていただろうか。
ひとだったかどうかもあやしい。本か標識を読んでいたような気もする。
とにかく親切だったのは覚えている。 26へ進む。

ぼくは電話ボックスに入った。
電話ボックスの中は明るく、外は暗いので、ガラスが鈍い鏡のようになる。
自然と外の様子はわからなくなり、ぼくは狭い空間に孤立する印象を持つ。
電話機は旧式で、硬貨とテレホンカードしか使えない機体だ。
くすんだ緑色をしている。
電話機の下の棚にある電話帳は使い古されてぼろぼろになっている。
他に目に付くものは、ボックス内にところどころ張られたサラ金のチラシシールと、 それらのはがされた白っぽい痕跡だけ。
さて、どうするべきか。
かっこうが悪いが、祖父の家に電話して母に迎えに来てもらうなら 44へ進む。
ただじっとしているなら 41へ行け。
こんなところに入っていても仕方がないと思うなら、 外へ出て23へ。

Π
ぼくは1階からエレベーターに乗り、4のスイッチを押した。
そして、ドアの上の階数表示が3を示して消えて、 4の表示が点滅したところで4階をキャンセルした。
エレベーターはΠ階で止まった
29へ進む。

Π階の中には明かりになるものがなかったが、 窓から漏れる商店街のすずらん型の街灯のおかげで、 物を探すのに苦労しない。
ここにはぜったいに何かがあるとぼくは思うので、探してみることにする。
48へ進む。

玄関を開ける。引き戸だ。
「おじゃまします」
ぼくは言った。
板張りの廊下と、立ち並ぶふすまの列が目に入る。
上がりかまちに、半紙がおいてある。毛筆の楷書で「どうぞ」と控えめに書いてあった。
ご厚意に甘えるなら21へ。
それとも、やっぱり人の家に無断で入るのはよくないと思うなら 39へ進んで山を降りること。

ぼくは川沿いに道を進んだ。
畑や田んぼはだんだんとなくなっていき、どうやら住宅地にはいってきたようだった。
そのまま進むと、川に架かる橋が見えた。
橋を渡ってみようか?
そうするなら38へ進む。
橋は渡らずに、川のこちら側を進み続けるなら 45へ行け。

商店街の店はどれも閉まっていて、ひどく静かだ。
すずらんの形をした街灯は、誰も通らない道を煌々と照らしている。
街灯にはぴかぴか光る色紙がいくつもくくりつけられていた。
ぼくはふと道の脇にある雑居ビルに目をやった。
明かるい窓はないが、シャッターも扉もない小さな入り口には明かりがあり、 奥のほうに狭い階段が見えた。
窓の並びを見るに、5階建てのようだ。
もし、ぼくがこのビルの屋上に誰かを見ていて、会ってみたいと思うなら、 その人が振った手の回数このビルの階数を掛けて、その数字に進む。
そんなことは体験していないと思うなら、ぼくはこのまま商店街を歩けばいい。 26へ進む。

ぼくはエレベーターに入った。
定員3名の、とても小さなエレベーターだ。力士ならひとりぶんか。
屋上へは行けないようだ。
2階のスイッチを押すなら 49へ進む。
3階のスイッチを押すなら 25へ進む。
4階のスイッチを押すなら 43へ進む。
5階のスイッチを押すなら 20へ進む。
ただし、すでに行った階へまた行くのは無駄だと思うので、ぼくはスイッチを押さない。
上へ登るのはやめて商店街を進むなら 26へ進む。

道は一本道のままだ。
人の住んでいるようなところはどんどんなくなっていき、 周りには畑や空き地や雑木林のようなものが増えてきた。
道の脇の街灯の下に、ぽつんと電話ボックスが立っている。
電話ボックスに入ってみたいのなら 3へ進む。
無視して先へ進むなら 23だ。

10
「はい」とぼくは答えた。
すると「そう。お土産をもらったとしても、食べちゃいけないよ」と言われた。
「誰かにあげるといいよ」。 16へ進む。

11
ぼくは送電鉄塔に備え付けられているはしごを登った。
なかなかてっぺんに着かない。
かなりの高さを登ったところで、あたりに霧が出ていることに気づいた。
さらに登って、霧が手足を滑らせてひやひやさせられるころになったところで、 これが霧ではなくて雲なのだと気づいた。
このまま登ると宇宙に出てしまうかもしれない。
ぼくは宇宙服を持ってきていないので、宇宙に出たら呼吸が出来ないし、 宇宙線にやられてやけどをするといけないので、降りることにした。 42へ進む。

12
道を進むと、だんだん街灯の数が多くなり、やがて商店街に出た。
すずらんの形をした街灯が、ずっと続いている。
商店街を構成する店は、すべてシャッターが下ろしている。
時計屋も靴屋も肉屋も八百屋も全部閉店。
人影はない。
こんな商店街が、このあたりにあっただろうか?
このまま商店街を進むなら、7へ行け。
さっきの分かれ道に戻って、暗い道を行ってみるなら28へ進む。
ただし、すでに暗い道を行ったことがあるのなら、ぼくにはもう行く気がない。 そのまま商店街へ進むこと。

13
その後、やしろの中の声は円周率を40桁ほど教えてくれた。
しかし、ぼくはそんなにいっぺんにたくさんの数字を覚えきれないし、 実を言うと、数学は非常に苦手なのだった。
どれくらい苦手かというと、1996年のその頃、祖父がなくなった夏のはじめごろは、 1学期の数学の期末テストで0点を取ってしまったので学年にひとりの追試が確定していた ほどなのだった。
その追試の最中、さだまさしによく似た数学の先生は教室の中をぶらぶら歩き回って10円玉を見つけ、 試験が終わったぼくに「取っとけ」と渡してくれたのだが、それはまた別のお話。
とにかく、迷子のぼくは円周率を教えてくれたお礼をそこそこ丁寧にしてから公園を去った。
「もう迷子になるなよ」と、去り際にやしろの中の声が言った。
知ってたんなら助けてくれればいいのに。
14へ進む。

14
やがて、ぼくは車通りの激しい道に出た。
それは、ぼくの知っている道だった。
かまくらみち。
どうやら、ぼくは迷子になっているあいだに、 思っていたのとは逆の方向に来てしまったらしい。
長後街道に出るつもりだったのだが……。
とはいえ、帰り道がわかったことに違いはない。
ぼくはその後、30分ほど歩いて祖父の家へとたどり着いた。
これで迷子はおしまい
おつかれさま。

15
たしかにこのビルだ。
ぼくはビルに入った。
ビルの1階には狭い階段と、管理人室らしき部屋の扉と、奥まったところにエレベーターがあった。
階段を登るなら 49へ進む。
エレベーターに入るなら上ボタンを押してドアが開くのを待ち、 8へ行け。
やっぱりビルを登るのはやめるなら、商店街を進んでいこう。
そうするなら26だ。
管理人室らしき部屋の扉は、鍵がかかっていて開かないし、だいいち不法侵入だ。

16
ぼくは、「ところで、ぼくは迷子なんですが」と実に微妙な気分で言った。
高校生になって、誰にも迷惑を掛けない形で迷子になった人はわかるかもしれない。
基本的には情けない事態なのだが、どことなく誇らしげな気持ちが混ざってくるものだ。
子どもの頃に、怪我をして包帯を巻いたまま学校へ行くときの気持ちに、 いくぶんか似ていると思う。
「帰りたいの?」と聞かれた。
「迷いっぱなしはまずいですよね」とぼくは答えた。
「そりゃそうだ」と、納得してくれた。 そう言いながら、何かを食べているようなので、ぼくはその食べ物を見つめた。
向こうのほうでもぼくの視線に気づいたらしく、「おいしそう?」と聞いてきた。
おいしそうだった。
「ほしい?」と、また聞いてくる。
ほしい。
「でも、あげないよ」きっぱり。
そんな殺生な。
「食べると帰れなくなるから」むこうも残念そうだった。
ああ、とぼくはうなずいて、「よもつへぐい?」。
「そう」と答え。やっぱり。
そして、「帰りたいなら、車の多いところへ行けばいいんじゃないかな。 大きい道に出れば、わかるでしょ?」と教えてくれた。
それもそうだ。
ぼくは礼を言って、屋上をあとにした。 2へ進む。

17
山道の角度は急になり、何度も折り返し、木々の密度は濃くなっていった。
今まで林の向かうからかすかに見えていた町の光も見えなくなった。
そろそろ引き返そうかと思ったころ、頂上に着いた。
たぶん頂上だろう。ここよりも高いところが見えない。
頂上はかなり開けた場所になっていて、家がひとつあった。
家というよりも屋敷だ。
かなり大きく、古い。
瓦屋根に築地塀、2階はなく平屋。
玄関に灯っている明かりは電灯ではなく、 提灯の中の橙色の揺らめきは、たぶん蝋燭か、灯り用のあぶら。
門は開いている。
迷い家?
夜の森をひとりで迷子になって、現実感を失っているのだから、 この家に入ってもいいとぼくは思う。
家へ入るなら5へ進む。
引き返すなら、ぼくの行く数字は39だ。

18
ブランコこと鞦韆は、古くはゆさはりといって、 植物の生長を祈念するための神具だったと聞いたことがある。
穀物神・豊穣神である稲荷とその使いがブランコに乗る迷子を気にかけてくれたのも、 ゆえのないことではないのかもしれない。

19
ぼくはさらに進んだ。
さきほどから聞こえてきた子どもの歌声に、 安っぽい効果音と聞いたことのある音楽が重なった。
そして、その音声は最近よく見るCMのものに変わった。
どうやら、いままで聞こえていたのはどこか近くにある家から漏れるTVの音らしい。
やがて、前方に光の動きが見えてきた。
車の音も聞こえる。
ぼくは、ものすごく嫌な予感がしている。
それでもこのまま進むなら、 14へ進む。
とてもこれ以上進むことが出来ないのなら、来た道を引き返すしかない。 32へ進む。

20
雑居ビルの最上階、5階にいる。
テナントは「煙草販売・叶和圓」。煙草屋さんだろうか。
こんな雑居ビルの最上階に店を置いて、買いに来る人がいそうにないが。
それとも、倉庫のようなものなのかもしれない。
ともあれ、階段を登るなら 36へ進む。
やっぱりビルを降りるなら 26へ行け。
エレベーターはこれ以上上へは行かないので、乗っても意味がない。

21
靴を脱いで廊下に上がった。
板張りの廊下は、靴下越しにもひんやりとしていて、心地がよかった。
ただ、山道を登ってきたせいであしのうらに汗をかいていて、 きれいに磨かれた板張りの廊下に蒸気のあしあとを残すので、ばつがわるい気分がした。
お邪魔してみたはいいものの、なにをするあてもないので、 適当に近くのふすまを開けてみた。
中は座敷で、真新しく見えるが古くていいにおいのする畳と、 また四方に立ち並ぶふすまの列しかなかった。
ふすまを閉じてしまうと視界がふさがれてしまい、 閉塞感をおぼえるので嫌だったが、 人の家でふすまを開けっ放しにしておくのも無作法だと思う。
そこで、ぼくはふすまをなるべく静かに閉じてから、 また適当に次のふすまを開けた。
同じような部屋だった。
このままではこの家の中で二重の迷子になってしまうかもしれない。
ぼくは次のふすまをちょっと開けてみた。
そこはまた同じつくりの畳とふすましかない部屋だったが、 中央に膳が置いてある。
膳には「どうぞ」と書かれた半紙と、油揚げの入ったビニール袋が乗っていた。
油揚げは普通にスーパーで売っているもので、5枚入りだった。
たぶん、この家のひとは、ぼくに油揚げをくれたかったのだろう。
ぼくは玄関へ戻った。
脱いだ靴がきれいに揃えてあったので、それを履いて、 「ありがとうございます。おじゃましました」とぼくは言って、家を出た。 39へ進む。

22
この文章群を鈴木直人氏に捧げます。
ところで数年前からぼくのティーンズパンタクルが見つからないんですが。

23
ぼくは電話ボックスをあとにして、道を進むことにした。
去り際に電話ボックスを振り返ると、さきほどは気づかなかったが、 かたわらに花束が置いてあるのが目に入った。
事故でもあったのだろうか。
ともあれ、ぼくは歩き出す。
やがて、道は川に突き当たった。
川は、左のほうから右のほうへ流れているようだ。
川沿いに道があり、今までの道とぶつかってT字路になっている。
上流のほう、左へ曲がると、先のほうに遠く赤い光が見える。
送電鉄塔だろうか。そちらへ進むなら 47へ行ってみよう。
右のほう、下流方面には、田んぼや畑に混じって普通の民家が増え始めている。
こちらに行きたいならば 6へ進む。

24
坂をのぼりきると、教会があった。
夏の初めで、夜で、誰もいない住宅街をひとりで迷子になって、 坂を上ったら教会があった。
ぼくは合理主義者のつもりだったけれど、そのとき、 たしかに、異界への入り口に立っていると思った。
その小さな教会に心惹かれるものはあったけれども、 だからといってどうすることもできない。
中に入ってみたくはあったが、迷子になって現実感を失いました、 というだけの理由で不法侵入ができるだろうか?
もちろんできない。
ぼくは、祖父の家がある方向とおぼしきほうの坂を下った。
あたりはあいかわらずの住宅街、あいかわらずの知らない道で、 物音もなく、動くものは犬の子ひとつもない。
坂を下りると、Y字路に行き当たった。
右のほうは、少し明るさが増しているような気がする。 大きな通りに出るのかもしれない。
逆に左のほうは、街灯の数が少なくなり、遠くのほうは暗くてよくわからない。
もう、ぼくの方向感覚は信用できない。どちらの道も祖父の家に向かっているような気がする。
どちらへ進もうか?
右へ行くなら12へ進む。
左なら28へ進む。

25
ぼくは雑居ビルの3階にいる。
かたわらには「ロン探偵事務所」の表札が掲げられた扉がある。
鍵が閉まっているし、第一、ぼくの偏見かもしれないが、 探偵事務所には監視カメラや侵入者よけの罠が仕掛けられていそうなイメージがあるので、 敬遠しておこう。
エレベーターに入るなら 8へ行け。
階段を登り続けるなら 43へ進む。
ビルを登るのをやめて商店街を進んでいくなら、 26へ行くといい。

26
やがて商店街は終わった。
すずらんの形をした街灯の列が終わると、とたんに道はさびしくなる。
店はなくなり、やがて民家もまばらになった。
里芋やキャベツを植えている小さな畑や、 暗くてよくわからないが空き地か資材置き場のようなところがあった。
しばらく歩くと、右に折れる道があった。
その道は両側がブロック塀になっていて、幅は狭く、人が2人やっと並べて歩ける程度だ。
見る限りずっと、まっすぐ伸びているように見える。街灯の数はまばらだ。
この道を行ってみるなら 31へ進む。
右に曲がらずに道なりに進むと、さらに畑が増えるようだ。
遠くのほうに電話ボックスが見える。
このまま進むなら9へ行け。

27
わくわくするほどファンタジーで、なによりもオリジナリティがあり、 魔法使いの弟子たる生活を堪能させてくれた(ありがとうアザゼル先生)「少年魔術師インディ」1〜3巻、
結局ピンポイントガンはバズーカより役にたたなかった「スペースハリヤー」、
仲間と一緒に冒険をした思い出の「貝獣物語」、
銀の武具でダルクファクトと戦った「イース」、
ファンタジーが欧州の専売特許ではないことを教えてくれた「桃太郎伝説」、
ぼくに怨霊の概念を教え、平景清の名を永遠に刻み込んだ「源平討魔伝」、
宮水の清冽さを思い起こさせる「新・鬼ヶ島」、
餓鬼の腹が海に入って河豚となるのは「月風魔伝」、
エニックスから出ている健部伸明の公式版が面白すぎてかすんでしまう不憫な「ドラゴンクエストU」上下、
あんまり記憶に残ってないけどごめんね「がんばれゴエモン!からくり道中」、
小五のときの授業中に構成をパクッた自作ゲームブックを作っていたら先生にばれたけど、 翌年その先生が「算数の森」とかいう自作ゲームブック教材を作って意趣返しをしたといういわくつきの 「悪魔城ドラキュラ」、
これまた構成をパクッたゲームブックを級友の佐々木くんと一緒に作った (マップがまんまアレフガルドじゃん!)「ドラゴンクエスト」、
犯人はヤス!「ポートピア連続殺人事件」、
いつだってハイラル地方に行けば冒険が始まるぜ(ドドンゴに爆弾食わせたりとか)!の「ゼルダの伝説」、
ごめん内容覚えてない「ヘラクレスの栄光U」、
強くてやさしい恐竜人たちが貧弱な毛のない哺乳類であるぼくと一緒に冒険してくれた 「恐竜伝説」、
ぼくの原点、「学園妖怪バスターズ」と「同2」、
ふりだしにもどる? いいやクライマックスだ!「ファンタシースター」と、 ネイーッ! 最後の敵ーッ! とにかくかっこよかった「同2」、
買い占めろ!「桃太郎電鉄」、
元ゲームはアレだがこっちは充分かっこよかった「ファザナドゥ」、
ヨーヨーだ!「アルゴスの戦士」、
ドーピングで強くなれ! 決めろ最強二起脚! の「ケルナグール」、
マッドマーティガン強いぜ! 原作映画見たことない「ウィロー」、
みじんこ! 13金男! 竜とぼくの共生!「サンサーラナーガ」、
ぴぴ、監督までするのかよ「ファミスタ」、
パンチやキックじゃなくて踏み付けで戦ってくれよと思った「スーパーマリオブラザーズ」、
ぼくが自分の小遣いではじめて買った本にして、ぼくの人生の方向性をあらかた決めた「邪聖剣ネクロマンサー」、
説明不要、あらかた決まっていたぼくの人生を確定した「女神転生U」、
そして、忘れちゃってごめんね、そのほかにもまだあったゲームブックたち34へ進む。

28
道を進むと、だんだん暗くなってくる。
やがて舗装された道は終わり、袋小路になった。
いや、よく見てみると行き止まりではない。
突き当たりの雑木林のなかに、土と横木でできた細い階段がある。
私有地のようには思えない。公園か何かへのみちだろうか。
林の中の階段を登るなら33へ進む。
さきほどの分かれ道へ引き返し、明るい道を進むなら12へ進む。

29
エレベーターを降りると、がらんとした空間に出た。
床はコンクリートの打ちっぱなしで、 同じくコンクリートでできた柱が何本かある以外は、なにもないようだった。
4へ進む。

30
ブランコなんて久しぶりだ。
どうせ長いこと迷子になっているのだから、もう少しぐらい迷っていても問題はないだろう。
ぼくはブランコに座って、猛然と漕ぎ出した。
もっと高く!
もっと遠く!
ぼくの体を交互につかむ加速感と浮遊感は、なかなかに快絶だ。
足を振るだけで静止した物体にこれほど運動量が与えられるのならば、 宇宙における人型機械の実用性も捨てたものではないかもしれない。
そんなことを思いながら、しばらくブランコを漕いでいたが、やがて疲れた。
ブランコから降りる。
ぼくは公園を出て帰り道の探索にもどろうとしたが、公園の片隅に目が行った。
榊のような、背が低くて葉が厚い樹が数本生えている中に、赤くて小さな鳥居があった。
近寄ってみると樹は葉が尖っているので榊ではなく柊で、 鳥居の向こうには小さなやしろがあった。
稲荷明神。
日本で一番やしろの多い神様だ。
もしぼくが油揚げを持っていて、食べるつもりがないので供えようと思うなら、 その油揚げの枚数このパラグラフの数である30を足した数字に進むこと。
油揚げを持っていないか、供えるつもりがないのなら、公園を出て祖父の家を探そう。
車通りの多いほうへ進めば、どこか知った場所へ出るはずだ。
14へ進む。

31
ぼくは両側が塀になった狭い道を進んだ。
それから、どれぐらい歩いただろうか。
前も後ろも塀と道しか見えない。
どこか遠くで子どもの歌う声が聞こえる。
嫌な予感がするので道を引き返すなら 32へ進む。
かまわずに、このまま進み続けるなら 19へ行け。

32
ぼくは小走りで来た道を戻った。
小走りということを除いても、戻りは早い気がした。
すぐにもとの場所にたどりつく。
ぼくはそのまま右へ曲がり、畑の中の道を進む。
9へ行け。

33
夏とはいえ風が涼しいので、山道のようなものを登っても汗が出るようなことはなかった。
暗さにもすぐ慣れた。ちょうど満月なので、 林の中でも自分の影がはっきりとわかるくらいに光量はあった。
それで気づいたが、今夜は満月だっただろうか。
そんな記憶はないが、先ほどまでは明かりを気にしていなかったために、 空のことまで気が回らなかったのだろう。
しばらく登ると、やや開けた場所に出た。
今いる場所は、山というには小さすぎ、丘というには高くて木々が茂りすぎているところの、 中腹あたりらしかった。
右手のほうを見ると、町を見下ろすことができた。
あたりの地形から帰る方向がわからないものかと見てみたが、 もともと知らない土地なのか、夜のせいなのか、まったくわからない。
比較的近くにひときわ明るい通りがあり、そのなかほどにあるビルに目が行った。
誰かがそのビルの屋上にいる。
なんとなく見ていると、その人影がこちらを向いて、大きく3回、手を振った。
山道は、さらに上まで続いている。
山道を登れるところまで登ってみるなら17へ進む。
もと来た道を降りてみるのもいい。 そうするなら39へ行け。

34
これらはみんな、ぼくが小学生のときにバザーで売ってしまい、 その後、夢に見るまでに後悔したゲームブックたちだ。
冒険記録用紙の書き込みも、たしかに幼い頃のぼくの字だ。
ぼくはこの本たちを抱えてビルを出て、祖父の家へと帰った。
ぼくは結局、異界にとどまることをやめて現実に戻ったわけで、 つまり、この、リンクで冒険するゲームで負けてしまったわけだが、 これは最上の負け方と言える。
あなたの操作がうまくいったおかげだ。
犬を連れた本当のぼくは、何も得ないまま祖父の死んだ晩の祖父の家に帰ったが、 あなたが操ってくれたほうの、本当ではないお話のぼくは、 少年時代に置き去りにしてしまい二度と取り返すことのできないものを異界から持ち帰った。
本当ではないお話のぼくは、うまく選択をしてくれたあなたにお礼がしたいが、 残念ながらなにもすることができない。
せめて、ここまでゲームを遊んでくれたあなたが、本当ではないお話のぼくが見つけたように、 異界で迷子になっているあいだに何かひとつでも昔の忘れ物を思い出すことができれば幸いだ。
そうなってくれれば、わずかでも恩返しができるのだが。
ともあれ、これで迷子はおしまいだ。
おつかれさま。

35
ぼくは油揚げが大好物というわけでもないので、どうせなら好きなひとが食べるのがいいと思って、 山の上の屋敷でもらった油揚げをお稲荷さんに供えた。
すると「くれるの?」とやしろの中から声がしたので、ぼくは「どうぞ」と答えた。
「むこう向いてて」と声。
ぼくは後ろを向いた。きい、とまるでやしろの扉が開いたような音がして、 次に、まるでビニールに包まれた袋をつかむようなかさりという音がした。
「もういいよ」と声が言うので振り返ると、やしろの扉がぱたんと閉まるところだった。
「ありがとう」と声。同時にビニール袋を破る音がする。
「どういたしまして」とぼく。「やっぱり、好きなんですね」。
「うん。なぜなんだろう」と声。
ぼくはそういったことにちょっと詳しかったので、「たぶんですけど、」と言いかけると、
「あ、敬語使わなくていいよ。神様じゃないから」と声が答える。
「狐?」とぼくが尋ねると、声は「うん」。やっぱり。
近所で狸は見たことがあるが、生の狐は見たことがない。
見たいけど、扉を開けるのは失礼っぽいしなあ。
「じゃあ敬語使わないね。たぶんだけど、もともとお稲荷様は、うかのみたま様っていう稲の神様で」とぼく。
「うん、知ってる」と答える声の、合間にかつかつと聞こえる音は、油揚げを食べる歯の音か。
「えーとその、狐は稲を荒らすけものをとって食べるから、うかのみたま様の使いと考えられて」とぼく。
「なるほどそうだね」と声。
「そのうち、同じく狐を使いにするインドのダーキニーっていう女神様と同一視されて」とぼく。
「荼枳尼天さまね」と声。かつかつ。
「ところがダキニ様は、夜叉女だったか羅刹女だったか、とにかく、もともとは人食いで」とぼく。
「たしか夜叉だよ。けっこう短気なところあるよね」。そうなんだ。
「でも人を食べるのはよくないんで、お釈迦様に禁じられたんだけど、 もうすぐ死ぬ運命の人の肝臓だけ食べていいってことになって」とぼく。
「それで? それで?」と声。かつかつごっくん。
「なんか油揚げは人の肝臓に似てるから、それで好物ってことになったらしいよ。 お稲荷様とダキニ様と狐は」とぼく。
「なるほどそれで」と声。「でも、似てるかなあ、人の肝臓に」。
「さあ。見たことないし」とぼく。
やしろの中の声は軽くげっぷをしたあと(狐もげっぷをするとは知らなかった)、 「ごちそうさま。ありがとう」と言った。
「どういたしまして」とぼく。うろ覚えだけど、そんなに間違ってないだろう。
「お礼にひとつ教えてあげるね」と声。なんだろう。
「ところで円周率、どこまで言える?」。教えてあげるっていうか、雑談じゃないか。
ぼくは中学生の頃にちょっとだけ円周率を覚えるあそびをしたので、言えないこともない。
「3.14159265358979」とぼく。
「半端な長さだなあ」と声。ほっといてくれ。
ところで、ぼくは、この冒険の中でエレベーターに乗ったことがあるだろうか?
あるならば 40へ進む。
ないならば、 13へ進む。

36
ビルの屋上に出た。
山の中腹で見たとおり、誰かがいて、ぼくに手を振ってくれた。
「こんばんは」と言われたので、ぼくも「こんばんは」と返した。
そして「森の中にいた人だよね?」と聞いてきたので、 「はい」と返した。
続いて「山頂には行った?」と聞かれた。
行ったのなら 10へ進む。
行っていないなら 50へ進む。

37
坂を上りきると、教会があった。
うん。
ここまでが本当にあったお話
でも、すべてが掛け値なしの真実だというわけではない。
たとえば、あのときぼくの手には引き綱が握られていて、 ぼくの隣には犬がいた。
当時のその犬は、まだ生まれて2年もしていない若い犬で、 生まれて初めて通る道を元気よく犬歩きしていたものだった。
それでも、坂の上の教会に行き当たったころには、 電柱にひっかけるマーキング用の残弾も尽きて、歩みも遅くなりがちだった。
その犬も祖父と同じようにもうこの世にはいない。
本当のぼくは、このあとまたしばらく迷ったあと、 汲沢バッティングセンターの前にたどりついて、 それから深谷の米軍通信隊基地の前を過ぎて、 葛野小学校の近くの祖父の家にたどりついた。
祖父の家に帰ったときには、出発から2時間強が経っていた。
犬は土間にへたばりこみ、母は「遅かったじゃない」といった。
それで迷子はおしまい。
翌日は、ぼくの兄弟と従兄弟たちとで斎場に泊り込んで通夜をした。
うん。
ここからは、本当にはなかったお話
実際あった話から実際になかった話へと続くのは奇妙な感じがするかもしれないけれど、 それでも、犬と一緒に迷子になったあの夜、 坂の上に教会を見つけたときに、たしかにぼくは非現実的な感覚を持った。
そこで、これを読んでいるあなたには、これから1996年の夏のぼくを操って、 リンクをたどるゲームをしてほしい。
ゲームとはいうが、このゲームに勝ち負けはない。
ルールはひとつ。なるべく現実に帰らないこと
とはいえ、現実のほうは容赦なく追いついてくる。
どんなにうまく進めても、かならずぼくは現実に帰ってしまう
ぼくは祖父が死んだ晩の祖父の家にたどりついて、その後の人生に戻る。
つまり、正確にいうと、勝ち負けがないのではなく、 負けが確定しているゲームなのだ。
このゲームは、ぼくをあやつって、できるだけ長い間、 異界にとどまろうとするゲームである。 さて、準備はいいだろうか。
もしもあなたが、この負けが確定しているゲームをやってみようと思うなら、 24へ進む。
そんな気がないなら、ブラウザを閉じてあなたの人生に戻るなり、 もっとおもしろそうなものを探しにネットを冒険するなり、 お好きなようにどうぞ。

38
ぼくは橋の上に立った。
普通の橋だ。
頑丈で、自動車が毎日100回通っても壊れない、 昭和の後半以降に作られたどこにでもある橋だった。 川の名前や橋の名前、それに竣工年数などは橋の欄干を見ればわかるはずだとぼくは思ったが、 見る気が起きなかった。
欄干から身を乗り出して川を見る。
黒々としていて、底が知れなくて、すすきのような葉の長い草が両岸や中洲からぼうぼうと生えていた。
幅はそれほどではなく、歩いても渡れそうな小さな川だったが、 夜に見る川というものは、どんなに小さくても恐ろしいものだ。
ぼくは川から目をそらした。
川音が人のざわめきに聞こえてくるのもいただけない。
嫌な感じだ。
この川は越えたくないと思った。
対岸を見ると、車が2〜3台、川沿いに走っているのが見えた。
橋を渡るなら 14へ進む。
橋を渡るのはやめて、元の岸を進むなら 45へ進む。

39
ぼくは山道を降り、坂の下の分かれ道を明るいほうの道へと進んだ。
12へ進む。

40
やしろの中の声が言う。「商店街にある雑居ビルのエレベーターで、 円周率の階に行くといいよ」。
「どうやって?」とぼく。
「3と4を同時に押せばいいんじゃない?」と声。自分で行ったことはないのか。
「でも、それだと3階か4階の、近いほうに止まるんじゃないかな」とぼく。
「そんなこと言われても」と声。「聞いた話だと行けるらしいけど」。
ぼくは「誰から聞いたの?」と尋ねる。
声は「上司の友だち」と答えた。誰だろう。
「中田町のうぶすな様だよ」と声。
なるほど、このあたりの土地神とはご近所仲間じゃないか。
それに、中田町といえば、ぼくの生まれた家と病院がある。
中田町のうぶすな神なら、ぼくは管轄だろう。担任みたいなもんだ。 悪いようになるとは思えない。
「どうにかして、エレベーター、止まれないかなあ」と、 やしろの中の声も思案気味。
あ、そうか、止まればいいのか。
ぼくはちょっと思いついたことがあったので、「ありがとう、なんだか行けそうな気がしてきた」 と言って、立ち上がった。
「そう。がんばってね」と声は答えて、それっきり静かになった。
おそらく、もういなくなったのだろう。
ぼくは商店街に向かって歩くことにする。
エレベーターには一度押した階を取り消すウルテクがある。よほど古いエレベーターでなければだいたい使える。
光っている階のスイッチを2連打すると、その階への到着をキャンセルすることができるのだ。
1階から4階へ向かい、3階と4階のあいだで4階をキャンセルすれば、たぶん、3と4のあいだで止まるだろう。
できなくてもともとだ、試してみよう。
3と4の間に進む

41
ぼくが待っていると、電話がかかってきたので、受話器を取った。
「もしもし」
ぼくが言うと、受話器のむこうから「ちょっと、大丈夫なの?」と、すごい剣幕で怒られた。
ぼくは「今は迷子ですので、大丈夫じゃないですが、たぶん帰れると思うのでやっぱり大丈夫です」 と答えた。
電話の向こうの人は、「ごめんなさい、間違えました」と言って切ってしまった。
用がなくなったのでぼくは電話ボックスから外に出た。 23へ進む。

42
鉄塔を降りると、フェンスの扉が閉まっていたので、 ぼくは苦労しながらよじ登った。
フェンスのうわっぺりにある有刺鉄線の返しにはひどく困らされたが、 基本的には外から入れないようにする仕掛けなので、どうにか越えることができた。
ぼくは着地のときにできた手のひらのすりむけを舐めて、 砂利や土の混ざった唾を吐きながら鉄塔を振り返る。
プレートには「あぶない! はいってはいけません」と書いてあり、 ドカヘルをかぶったコミカルな作業員がぼくに向かって手のひらを突きつけていた。
川の上流の、車の往来が激しい道を進むなら 14へ進む。
川の下流のほうへ進むなら 6へ進む。

43
雑居ビルの4階だ。
この階のテナントは「フラワーショップ・花々」。
こんなところに店を出して客が来るとは思えないし、名前にひどくセンスがないし、 いったい経営者はやる気があるのだろうか。
なんとなく今夜の祖父の家の匂いがする気がしたが、 すぐに棺の中の花の匂いだと思い当たった。
エレベーターに乗るなら 8へ進む。
階段を登るなら 20だ。
狭い階段を降りてビルを出、商店街を進むのならば 26へ。

44
高校生にもなって情けない話だが、ぼくは母に 「迷子になったから迎えに来てください」と伝えようとした。
しかし、ぼくは財布を持ってきていないことに気づく。
それに、よく考えると、ぼくは母がいる祖父の家の電話番号を覚えていない。
仕方がないのでぼくは電話ボックスの外へ出て、道を急いだ。
とにかく大きい道へ出れば、なんとかなるだろう。
14へ進む。

45
左手に川を見ながらさらに進むと、右手のほう、住宅地の中に公園が見えた。
……ブランコが見える。
30へ行ってブランコで遊びたい!
だが、現在、そんな余裕はない。ぼくは迷子なのだ。
おとなしく先を急ぐなら 14へ進む。
行く手のほうからは車の音が聞こえてくる。
おそらく大きな通りが近いのだろう。

46
ぼくが子どもの頃、祖父はよくAコープの前の焼き鳥屋の屋台で、 焼き鳥を買ってくれた。
あの焼き鳥は、間違いなくぼくが生涯で食べた焼き鳥のうちで最上のものだし、 たぶんこれからもずっとそうだと思う。

47
道を進むと、脇に緑色のフェンスが見えた。
上を見ると赤い光がふたつ。
送電鉄塔だ。
送電鉄塔を囲むフェンスの扉は開いていて、 かたわらには「あぶない! が、はいってもかまいません」と書かれたプレートがあった。
送電鉄塔に登ってみようか?
そうするなら11へ進む。
このまま上流のほうへ進むと、車が頻繁に通る道に合流するようだ。
そちらへ進むなら 14へ進む。

48
ぼくは1本の柱の影で、スーパーの手提げ袋に入った本の束を見つける。
どれも文庫サイズで、背表紙が青い。
双葉文庫のゲームブックだ。
ぼくは泣いた。
27へ進む。

49
ここは雑居ビルの2階だ。
鍵のかかった扉には「珈琲・カリオストロ」の表札と、「CLOSED」の掛札がある。
閉店してもなお、かすかにコーヒーのいい匂いがする。
エレベーターに入るなら 8へ進む。
階段を登るなら 25へ行こう。
やっぱりビルを登るのはやめて商店街を行くなら、 26へ行け。

50
「行っていないですが」とぼくは答えた。
「ふうん」。 16へ進む。



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